こんにちは。忙しさを言い訳に少しさぼってました。自分としては本当に忙しかったんですよ。とは言ってもじゃあ、ブログ書いてるときは暇なのか?と。そうではない。他にやりたいこともありますが、ブログもやりたい。ほら、忙しい(;^ω^)。
文豪の作品です。武者小路実篤。
文豪作品。時代は流れ、今となっては文化の土台的なものが違いますから、何がどう文豪なんだ?と思うことも少なくないと思います。価値観も文体もかび臭いんだよ、と。ま、そうかもしれませんね。『吾輩は猫である』なんて、当時は面白おかしい話だったようですよ。現代の我々にはどこが?って思うし。
そういうのがゴロゴロしてる文豪作品において、武者小路実篤は割と読みやすいのではないかと思います。この人はバリバリ昭和でも活躍した作家さんなので。
で、この人の作品というと、こちらよりは『友情』かと思いますが、僕は断然こちら。本当は三部作らしいですね。それは置いといて。この作品は現代の作家もあわせてマイベストなくらい好きです。文豪作品なのに読みやすいし。
少し寄り道になりますが、特に若いみなさんが文豪作品に触れる場合、是非、買ってください。文庫で結構です。というのは、図書館なんかに昔からある本と本屋さんで現在売ってる本とでは、読みやすさが違うことが間々あります。特に仮名遣い。昔発行された本はそれこそ古文じゃね?って感じの文章がけっこうある。最近の本だと、用語の説明があるのもあるしね。少しお金払っても損はしないと思います。
この点青空文庫ってそのあたりどうなんでしょ?いつの時点でのを無料公開にしてるんだろ?無料でも読みづらいならいらない、というか、読まなくなるよね。逆にばっちり現代仕様なら…本屋さんや出版社は真っ青だ。
さて、読書感想文なのでそろそろ少し中身に触れましょうか。というか、これ、僕なりに学生さんへのエールのつもりの部分が大きいのですが、読書感想文って、一から十までその本に触れなきゃならないってことないですからね。読書をして自分の昨日のことを思い出したらそれを書いても良いと思うし、例えば『死』が絡んでくるこの作品を読んで極楽往生を考えたら親鸞の方に展開していくとか、全然おかしくないと思います。思ったことを書けばいい。
愛と死。以下ネタバレ含むなので要注意です。
何がすごいって、幸せって案外すでにそこにあるもので、それに自分が気付けるかどうかって部分が大きいのかもしれない、と思い知らされるのです。
素敵な人が恋人でなければならないわけではなく、恋人は素敵に見えるもののようです。恋愛がうまくいってる限り、当人にとって恋人は素敵な人なのです。そうだよね。幸せそうに結婚した人々は美男美女ばかりではないし、世の夫婦たちはそういうことで不満を言ってるようでもないし。だったら離婚しちゃえば?ってくらい相手の文句を言うけど、結局一緒にいるでしょ。理由は色々あるんでしょうけど、みなさんそれなりに幸せを感じてるんだと思います。
主人公カップルもそんな感じ。というか、とても幸せそう。恋に浮かれていますが、決して嫌な感じじゃないです。僕はこういう人たち好き。初々しいというか、純粋というか、応援してあげたいです。
なのにあの展開。もう、心をだるま落としでスコンと抜かれたようになりました。なんという喪失感。これまで、これほどに喪失感を感じた作品はありません。見事です。これが文豪作品かと唸ってしまう出来。
なかなか報われない恋路なんだから物語としてせめて感動的なハッピーエンドを迎えてほしかったのに…と思わざるを得ません。
ただただ喪失感。そしてその後に残る虚無感。もう、打ちひしがれます。文学なんだし、こういうところで勝負してほしいと、某春樹さんに言いたくなります。彼の文章も実に素晴らしいのですがね、どうにもセクシー描写が好きじゃない。ああいうのって、読者サービスみたいなものなのかな?なくても読者は離れませんから大丈夫ですよ。
おお、脱線。ま、そういうことで、愛と死。とんでもなく破壊力のある愛の物語。究極的です。もう、某鳥の詩の美鈴ちんは幸せだったのかの議論を超える、『彼は幸せだったのか』、です。彼女に出会わない人生の方が、傷つかずに生きられて結果的により幸せになれたんじゃないか、という人がいそうな、そしてそんなことない、と熱く切り返す人が出てきそうな、そんな物語です。
僕は、幸せだったと思います。結末こそあれですが、その過程は間違いなく幸せでしたし、なんていうか、そうあってほしいのです。最後まで幸せじゃなきゃ『幸せ』ではない、なんてハードルが高すぎる。生きづらくなってしまう。ぬるい生き方を推奨するほどではないですが、良かったな、幸せだな、っていうのは感じる心がないと感じないと思います。進んで拾わなきゃダメなのです。そういうのをしみじみ感じる話でした。
テレビドラマじゃないから
昨今受けがいいジェットコースター的な展開はありませんが、じわじわ来る、間違いない名作です。ページ数も少なめなのでとっつきやすい、いや、ページ数にかかわらず本当に是非是日読んでいただきたい作品です。
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